ピンク色が女性の色となったのはなぜ?いつからなの?‐No.916

トイレマーク ――胴体のみシンプル

ピンク色が女性のイメージになった理由について解説します。

現代じゃ当たり前のようにピンクは女性の色だけど…

ピンクが女性の色に定着したのは好み?

トイレマーク発見場所:北九州市八幡東区 「スペースワールド」
発見日:2017年12月10日
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ピンク色が女性の色になったのは好みから?

私たちが普段の生活のなかで目にする小物や服装のなかで「ピンク色」というと、女性や少女が身に着けているイメージがあります。

イメージ(楽天)

このような甘めなロリータファッションが着られるのは女性ならではかもしれません。

しかし、ピシッとしたスーツもピンクはやはり女性が似合う気もします。

イメージ(楽天)

このように現代ではピンクは女性のものというイメージが定着していますが、これはいつからなのでしょう。

ピンク色が女性に流行ったのは単なる好み?

歴史を見てみると長い間ヨーロッパの絵画などでは、青が女性の色でありました。聖母マリアの色として青が使われてきたからです。しかしそもそも、当時は染料がとても高価だったため、カラフルな絵画やファッションは、王侯貴族のためのものでした。

そんな時代、18世紀のロココ調の時代に、ルイ15世の公妾であったポンパドール夫人はピンクを好みました。このピンク色はベルサイユ宮殿で流行し、たちまち、ピンク色の洋服はヨーロッパ全土に広まっていったそうです。

ポンパドールフランソワ・ブーシェ「ポンパドゥール夫人の肖像」(画像:Wikipedia)

しかし当時はピンク色はまだ男性も着る色ではありました。1840年頃にアメリカの絵画学校で描かれた少年の絵は、ピンク色の洋服を着ています。といってもこの絵ではピンクなうえスカートもはいていますけどね。

ピンク色の少年Young boy in pink, American school of painting (about 1840)(画像:Wikipedia)

また、アメリカの業界誌「Earnshaw’s Infants’Department」の1918年6月の記事では、「一般的には、男の子はピンク、女の子は青です。その理由は、より決定的で強い色であるピンクが男の子に適しているのに対し、より繊細で可憐なブルーは女の子に適しているからです。」という記述も見られるそうです。今と認識が逆ですね。第二次世界大戦前の1927年に、アメリカの情報誌『TIME』がに行った調査では、当時のアメリカの主要百貨店10店のなかで「女の子らしい色」として、青を販売していた店舗と、ピンクを販売していた店舗は同数だったそうです。

とはいっても、当時の染料はすぐに退色してしまうものが多く、子どもたちは白を着ることが多かったそうです。また、清潔に着られるよう漂白などもしていたようです。

こうした状況が変わったのは、ひとつに化学染料が発明されてから

着色した子供服の大量生産が可能になり、男児には当時流行していた青のセーラー服が人気となり、これが男児=青の傾向に一役かったそう

また、1930年代になると、イタリアのデザイナー、エルザ・スキャパレッリはマゼンタと白で「ショッキングピンク」を開発、ドレスなどを発表し、世界に衝撃を与えました。しかし時代は戦争へ突入。ファッション界はしばらく暗黒の時代となりました。

ピンクが再び脚光を浴びたのは戦後のアメリカでした。1953年にアイゼンハワー大統領が就任する際に、ファーストレディである夫人マミー・アイゼンハワーはピンク色でラインストーンが散りばめられた美しいドレスを着ていました。

Mamie_eisenhowerマミー・アイゼンハワー(画像:Wikipedia)

マミーはピンク色が大好きで色んなものに取り入れており、また、家庭的でもありました。全国紙はその魅力的なファーストレディの姿を多く取り挙げました。

折しも大戦が終わり、女性たちも様々にファッションを楽しみ始めた時代。様々な商品ラインナップのなかにピンクが登場し、また、メディアもピンクを取り挙げました。結果、ピンク色は女性のイメージとなっていったそうです。


効果的にピンクを取り入れたマリリンモンローの映画「紳士は金髪がお好き(1953年)」(楽天)

次のケネディ大統領夫人のジャクリーンもピンクを好み、悲しいながらも1963年のケネディ大統領暗殺時の夫人のシャネルのスーツは皆の印象に残ることとなりました。

ケネディケネディ大統領と夫人(画像:Wikipediaより)

その後もアメリカのファーストレディは伝統的に重要なシーンではピンク色を取り入れています。ピンク色が女性の色として広まるのは戦後のアメリカに強いかかわりがあったみたいですね。

ピンクの語源はナデシコ?

ナデシコの仲間イメージ※pinkの語源の花そのものではありません。

英語の「pink」の語源はというと、元来「ナデシコの花」の意であり、シェークスピア(1564-1616)の時代にはまだ色名としての用法はなかったとされます。それが17世紀頃にだんだん色を指すよう言葉として広まっていったんだとか。

ナデシコの花というと、日本でも自生種などを見ることができ、国内ではピンク色は桃色ともいいますが、「撫子色(なでしこいろ)」と呼ぶこともあります。

なでしこといえば、「やまとなでしこ」の語法にもあるように、日本では素敵な女性の形容詞でもありますね。

やまとなでしことは
日本女性の清楚な美しさをほめていう語。(大辞林 第三版)

 

この「やまとなでしこ」という言い回しは、『古今和歌集』の「あなこひし今もみてしが山がつのかきほにさける山となでしこ(よみ人知らず)」や『新撰万葉集』の「吾而已哉 憐砥思 蛬 鳴暮景之 倭瞿麥(われのみか あはれとおもふ きりきりす なくゆふくれの やまとなてしこ)(素性法師)」という和歌などで見られることから、10世紀初頭には言われるようになったと見られています。

しかし、女性をナデシコに見立てるというのはそれよりも古く、『万葉集(8世紀)』にも見られるそう。ただこの本では同時に、男性をナデシコに例えた歌もあるそうです。う~む…。大和時代から平安時代にかけてナデシコは女性側のものに徐々になってきたということでしょうか。ちなみに、日本女性=大和撫子というとらえ方は、外国を意識するようになった明治以降ではないかと言われます。

これらをみてみると、近現代的にはピンクはアメリカの影響かもしれませんが、日本では独自にピンク色は女性側のものとしてとらえる素養があったのかもしれません。

これはとても興味深いことです。

ちなみにピンク色を表す単語はほかの言語では、フランス語の「rose」のようにヨーロッパの他の諸国では「バラ」を表す単語がもとなのだそう。「バラ色」というニュアンスになりますね。バラもまた、女性とは縁深い花ではあるので、こちらも気になりますね。

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ゲイとピンクについて

(画像:Wikipedia「ピンクトライアングル」)

このほか、ピンク色というのは、歴史的にある一つの側面もありました。

それは、第二次大戦中、ナチス軍はホロコーストで強制収容した者にはその留置される理由別に色分けをした逆三角形の胸章の装着を義務づけていたのですが、男性の同性愛者はラベンダー・ピンク色の紋章をつけさせていたのだそう。女性の同性愛者はブラックだったそうです。

このピンクの逆三角形の紋章「ピンクトライアングル」はナチス軍に強要されたものではありましたが、現代では性的少数者(LGBT)のシンボルとして、プライドを示す際のものとして掲げられていることもあります。

最後に ピンクと性別について

こうして現代においてピンク色について女性のイメージが強くなっているのは、何となくわかりました。しかし、ピンクという色はほかの色よりも性別によって分けられる傾向が強いのかもしれません。

 

ピンクシャツデーといういじめ撲滅のムーブメントがあります。

これは、2007年にカナダでピンク色のシャツを着た少年が虐められたという事件を受け、その友人が学内の知人全員に「ピンクのシャツを着て来てくれ」と頼んだ翌日、学内がピンクの服装で埋まり「いじめを許さない」という雰囲気に包まれた、という出来事があったからだそう。背景には欧米では男性がピンクを着用することにかなりの抵抗がある模様(日本では割と一般男性がピンク色を着用することは見られますけどね)。

このことからカナダでは毎年2月最終水曜を「ピンクシャツデー」とし、現代では性別をからかうことのみならず、いじめや差別、偏見を許さないという取り組みになっているのだとか。この運動は瞬く間に世界にも広まり、日本でも毎年各地で行われています。

色には様々なものがありますが、なかでもピンクだけ、性別によって着用するに抵抗があるのは割と大きな問題です。これは、同じように女性の色として認識されている赤よりも極端な傾向だと思います。色によるあいまいな性別の偏見という点で、トイレマークもその偏見を助長しているものの一つではあると思います。私がこうして日々観察・公開しているものも、偏見を担いでいるかもしれません。

ヒト型や、色や、持ち物など、男女にどういった傾向があるのか、それを観察するためにこのサイトを続けていますが、偏見につながるトイレマークの在り方については、私がこれから真摯に向き合っていかねばならないテーマだと思っています。色々と不完全ですが、偏見や差別には私も反対です。トイレマーク写真を収集するうえで、私も今後どうすればいいのかは考え中です。

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参考URL

Wikipedia「PINK」 https://en.wikipedia.org/wiki/Pink

鹿島建設 マンスリーレポートダイジェスト2001年2月「色と心理」 https://www.kajima.co.jp/news/digest/feb_2001/tokushu/toku01.htm

VOX 「How did pink become a girly color?」 2015.4 https://www.vox.com/2015/4/14/8405889/pink-color-gender

ELLE 「ピンクが女の子の色になったのはいつ?」 https://www.elle.com/jp/culture/a235493/cfe-why-pink-has-become-girly170310/

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/6703/

レファレンス事例詳細 「日本女性を「やまとなでしこ」と言うようになったのはいつ頃からか。」石川県立図書館 2011年8月https://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000089614

スミソニアンマガジン 「When Did Girls Start Wearing Pink?」2011年4月 https://www.smithsonianmag.com/arts-culture/when-did-girls-start-wearing-pink-1370097/

日本ピンクシャツデー https://pink-shirt-day.com/

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